退職給付会計の簡便法とは？

退職給付会計の簡便法とは？

簡便法の概要

-簡便法の概要-

退職給付会計の簡便法とは、中小企業や特定の要件を満たす企業が退職給付債務の計算を簡略化するために利用できる会計手法です。この手法は、以下の特徴があります。

* -注記情報の省略- 企業は注記情報として退職給付事業の財務諸表を提出する必要はありません。
* -受給債務の算定免除- 期首時点で受給債務が基準日に満期を迎え、支払われることが確実な場合、それらの債務の算定が免除されます。
* -平均余命表の利用制限- 平均余命表は、将来の給付金受取額を計算するために使用されますが、簡便法では一部のケースでその利用が制限されています。
* -年金累積額の減価償却- 退職給付信託に年金累積額を拠出した場合、拠出額は年数をかけて減価償却されます。

以上の特徴により、簡便法は中小企業や特定の要件を満たす企業が退職給付債務の計算に伴う負担を軽減するのに役立ちます。また、この手法は会計処理の簡素化と適切な財務情報の提供の両立を図るものでもあります。

簡便法の適用条件

退職給付会計における簡便法は、一定の条件を満たす企業が適用できる規定です。その適用条件は次のとおりです。

* 退職給付制度が確定給付年金制度であること
* 給付型退職金制度を設けていないこと
* 退職給付金の期待値が、事業年度末の給与総額の10％以下であること
* 実施年度を含め、直近4年度においていずれの年度も、退職給付金の支払超過額が実質収益の1％以下であること

簡便法による計算方法

退職給付会計における簡便法では、過去の勤続期間を基に退職給付債務と費用を算定します。この方法は、通常の退職給付会計に比べて計算が容易で、中小規模企業や退職給付義務が少ない企業に適しています。

具体的には、従業員1人あたりの退職給付債務を退職予定年齢までの平均勤続年数と退職給付原価に基づいて算出します。退職給付費用は、この退職給付債務を一定期間（通常は10年）にわたって均等に攤配します。

簡便法と原則法との違い

-簡便法と原則法との違い-

退職給付会計の簡便法は、従業員数が100人未満、または退職給付金の積立額が総資産の5%未満の企業を対象としたものです。一方、原則法は100人以上または退職給付金の積立額が総資産の5%以上の企業に適用されます。

簡便法と原則法の主な違いは、測定方法にあります。簡便法では、退職給付金の債務を過去勤続年数に基づいて賦課的に計上します。一方、原則法では、退職給付金の債務を将来発生する給付額の現在価値に基づいて計算します。

また、簡便法では積立不足が発生した場合にのみ費用を計上しますが、原則法では毎年積立額を計上し、不足が発生した場合は費用を計上します。このため、簡便法では原則法よりも積立額が少なくなり、費用が後倒しになる傾向があります。

簡便法のメリットとデメリット

-簡便法のメリットとデメリット-

退職給付会計の簡便法には、メリットとデメリットの両面があります。メリットとしては、計算が比較的単純で、データ収集や計算にかかる時間が大幅に短縮されることが挙げられます。一方で、デメリットとしては、実際の退職給付債務よりも過小評価または過大評価される可能性があり、将来の財務状況を正確に反映しない可能性があります。したがって、企業は簡便法の適用を検討する際は、メリットとデメリットを慎重に比較検討する必要があります。