『退職給付信託』の解説
投資の初心者
先生が以前に話されていた『退職給付信託』についてもう少し詳しく知りたいです。
投資研究家
退職給付信託とは、企業が退職一時金や年金掛金の拠出のために株式などの有価証券を信託契約に拠出する仕組みだよ。
投資の初心者
なるほど。その仕組みは平成12年から導入された退職給付会計に関連しているんですよね?
投資研究家
その通り。退職給付会計の導入に伴う積立不足を圧縮するために設けられたスキームなんだ。積立不足を圧縮するために保有している持ち合い株式を売却することも考えられるが、そうすると支配権を失ったり、株価が下がったりする問題が生じるためね。
退職給付信託とは。
「退職給付信託」とは、企業が株式やその他の有価証券を、退職後の給付（退職一時金や年金）に備えるための信託契約に拠出することです。
この制度は、2000年（平成12年）の退職給付会計の導入に伴う資金不足を補うために設けられました。企業は、退職給付会計基準による資金不足を圧縮するために、保有している持ち合い株式を売却することを検討しますが、これには以下のような問題があります。
* 株式を発行している企業の支配権を失うおそれがある。
* 市場に大量に株式が売却されると株価が下落するおそれがある。
『退職給付信託』とは何か
退職給付信託とは、企業が従業員に退職金の支払いを確保するために設立する信託制度です。企業が信託銀行などに資金を信託し、信託銀行はこれを運用して退職給付金の財源を確保します。退職給付信託は、退職金制度の安定性と確実性を高める手段として利用されています。
退職給付会計導入による積立不足圧縮
退職給付会計の導入は、企業の積立不足を圧縮する効果をもたらします。退職給付会計では、企業は将来支払われる退職給付金に対応する負債を会計上認識する必要があります。この負債額が積み立てられている退職金資産額を上回った場合には、不足額が積立不足として計上されます。
計算上発生した積立不足は、企業が退職給付債務を確実に支払うために必要な追加資金を意味します。退職給付会計を導入することで、企業は自社の財務状態を正確に把握し、退職給付金債務に対するリスクを適切に管理することができます。また、積立不足を圧縮することで、企業は財務状況の改善や適正な利益の計上に貢献できます。
持ち合い株式の売却の問題点
『退職給付信託』の解説持ち合い株式の売却の問題点
退職給付信託において、企業間で保有し合っている持ち合い株式を売却する場合、いくつかの問題点が懸念されています。まず、保有していた株式の価値の下落に伴い、退職給付信託の資産価値が減少する可能性があります。さらに、持ち合い株式の売却は、対象となる企業同士の資本関係や経営戦略に大きな影響を与えることがあります。また、市場に大量の株式が放出されることで、株価の急落を引き起こす可能性もあります。
退職給付信託の役割と活用方法
-退職給付信託の役割と活用方法-
退職給付信託は、企業が従業員に対して支給する退職給付を確実に履行するために活用されます。企業は退職金の原資を信託銀行に信託することによって、信託銀行が運用・管理を行います。これにより、企業は資金の運用リスクを軽減し、退職給付の安定的な支給を確保することができます。
退職給付信託の活用方法は様々あります。代表的なものとしては、確定給付年金制度や確定拠出年金制度への拠出があります。確定給付年金制度では、企業が従業員に退職後の年金給付額を約束し、退職給付信託を拠出します。一方、確定拠出年金制度では、企業が決められた拠出額を退職給付信託に拠出し、従業員は自分で運用先を選択することができます。
企業にとってのメリットとしては、退職給付の安定的な支給が確保できること、財務内容の健全化が図れることなどが挙げられます。また、従業員にとっても、退職後の生活を安心して設計できるというメリットがあります。
退職給付会計との関係性
退職給付会計との関係性
退職給付信託は、退職給付会計の重要な要素です。退職給付制度を運営している会社は、国際財務報告基準（IFRS）または米国会計基準（US GAAP）に従って財務諸表を作成する必要があります。
IFRSでは、退職給付債務がバランスシートに計上され、退職給付費用が損益計算書に計上されます。US GAAPでは、退職給付債務がオフバランスに計上されますが、退職給付費用は損益計算書に計上されます。
退職給付信託は、退職給付債務を資金調達し、将来の退職一時金や年金債務を支払うために使用されます。信託は、退職給付制度から独立した別個の法的存在です。つまり、退職給付制度の資産と負債は、会社の資産と負債とは別個に管理されます。